事例1|技術と、代表の想いを、売り物に翻訳する
- 課題
- 高い加工技術があるのに、それが消費者にとって何の価値になるのかを社内の言葉で説明できない。同じことが代表の「届けたい価値」にも起きていた。
- 打ち手
- ①技術の棚卸しと市場価値への翻訳 ②ストーリーと世界観によるブランド化 ③販路の開拓、の3段階。言葉は外から持ち込まず、対話で代表がすでに持っているものを取り出した。
- 結果
- 県のデザインセレクション選定と板金技能の表彰。BtoC展示会で1日あたり売上200万円。商業施設イベントで2日間 約2,000人。
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課題
高い加工技術を持ちながら、発信に課題を抱える中小の製造業が多くあります。BtoBの下請けとして長く安定してきた会社ほど、自社の技術が一般の消費者にとって何の価値になるのかを、社内の言葉で説明できません。同じことが、代表の中にある「届けたい価値」にも起きます。想いが言語化されていないと、事業の判断基準が代表の頭の中にだけ残り、周りは何を基準に動けばいいのか分からなくなります。
なぜその打ち手を選んだか
技術の紹介から入っても売れません。「何ができるか」は作り手の言葉であって、買い手の言葉ではないからです。「誰の、どんな困りごとを解くのか」まで翻訳して初めて、消費者に届きます。どの案件でも3段階を踏んでいます。①技術の棚卸しと、市場価値への翻訳 ②ストーリーと世界観によるブランド化 ③販路の開拓、の順です。
言葉づくりのほうも、きれいなキャッチコピーを付けるだけでは解決しません。必要なのは、事業のあらゆる判断がそこへ立ち返れる柱です。取ったのは、対話を重ねて代表がすでに持っているものを取り出す形でした。外から新しい概念を持ち込むと、聞こえは良くても本人が使わなくなるからです。
やったこと
農機具などの板金技術を持つ金属加工メーカーでは、その技術をレジャー用品(焚火台・炊飯窯)へ展開する開発を支援しました。プレスリリースとオウンドメディアでストーリーを立て、SNSで世界観を作ったうえで、自治体と卸に当てています。板金技能の表彰も受けました。道の駅とアウトドアのセレクトショップへの取り扱いも橋渡ししています。
同じ会社が立ち上げた農業体験プログラムでは、セッションを重ねて2つの言葉に絞り込みました。ひとつは「Field to mouth(畑から口へ、いのちをいただく体験)」という普遍的なテーマ。もうひとつは「半歩先の豊かさ(日常に、本物の体験と学びを)」という提供価値です。この2つが、その後の事業全体のコミュニケーション戦略の柱になりました。同じ1社の中で、商品を売る仕事から、事業の柱を言葉にする仕事へ広がった案件です。この農業体験のブランドは、県のデザインセレクションに選ばれています。
ステンレス治具のノウハウを持つメーカーでは、すでにあったヒット商品の知見に、新しい切り口と体験価値を足した新ギアを開発・ブランド化しました。BtoC展示会で1日あたり売上200万円を記録しています。
紙加工の会社と外部デザイナーを結びつけた企画では、立ち上げから実行までを担当し、商業施設のイベントに接続して2日間で約2,000人を集めました。
この型について
素材が金属でも紙でも、骨格は同じです。地場の製造・工芸事業者と、外部の作り手や市場をつなぎ、企画から実行、販路の接続までを一気通貫で持つ。すでに技術がある会社が、まだやったことのない売り方を最初の形にして、回るまで付き添う局面が、最も力を出せる領域です。言語化はPRの手前の作業に見えますが、実際には事業の判断そのものに効いてきます。